うまく行かなくなった会社を立て直す


会社存続のための諸策
   会社の経営の立て直しの王道とも言える民間レベルの施策である「事業内容の見直し」や「規模の縮小」は経営学の分野で星の数ほどの書籍が ある領域です。当サイトは解散清算の法的周辺を解説するのが主眼であるので、以下会社再生の法的救済策を概観するにとどめます。
挿絵01  会社更生法適用 
1952年施行
会社更生法適用の条件
  会社更生法は、株式会社だけが対象となります。
  経営困難ではあるが、再建の可能性を持つと考えられる企業が条件。   一般更生債権額の2分の1、更生担保権額の4分の3以上の同意が必要。   裁判所は、次の要件のすべてを満たす場合には、更生計画認可決定をしなければならない(会社更生法199条1項)。
  (1) 更生手続または更生計画が法令に適合すること
  (2) 更生計画の内容が公正かつ衡平であること
  (3) 更生計画が遂行可能であること
  (4) 更生計画の決議が誠実かつ公正な方法でなされたこと
  (5) 他の会社とともに持分会社への組織変更または合併、会社分割、株式交換もしくは株式移転を行うことを内容とする更生計画については、認可決定時に、他の会社がその行為を行なうことができること
  (6) 行政庁の許認可、免許その他の処分を要する事項を定めた更生計画については、その行政庁の意見と重要な点において反しないこと
会社更生法適用のメリット
  1. 会社更生手続きの開始決定があったときは、破産、民事再生等の他の倒産手続きは中止されますので、更生手続きはあらゆる倒産手続きに優先することになるのです。
  2. ゴーイング・コンサーン・バリューにより企業価値が評価されます。
  3. 会社法の特則があります。会社更生が認可されると、会社法の特則が適用され、合併、増資、減資、定款変更、取締役変更等が簡易に行えるようになります。
  4. 債権届出のない債権は失権します。この失権効は重要な効果です。すなわち、会社更生手続きでは、債権届出期間満了までに届出のなかった債権は、失権してしまいます。
  5. 租税債権等を含めたすべての債権が更生手続きに従います。担保権も租税債権も、基本的には会社更生手続きに従うことになります。
会社更生法適用のデメリット
  1. 会社更生手続きをとると会社経営、会社財産の管理処分権は管財人に移りますので、経営者の経営権がなくなり、経営者の責任が問われることになります。
  2. 手続きが大規模になり、終了まで長期間を要します。
  3. 担保権その他の権利行使に相当の制限が加えられます。もっとも、この点は更生会社にとってはメリットでもあります。
  4. 予納金が他の倒産手続きに比べて高くなっています(ケースバイケースですが東京地裁において上場企業の場合予納金が一般的には3,000万円〜5,000万円であると言われております)
会社更生法適用の手続
  1. 会社更生の申し立て
  2. 保全処分
  3. 保全管財人の選任( 更生計画立案 )
  4. 更生手続きの開始決定 ⇒ 再建の見込みない場合破産処理へ
  5. 更生管財人の選任
  6. 再建届出
  7. 第1回関係人集会( 管財人の報告 )
  8. 再建調査期日
  9. 更生計画案の提出
  10. 第2回関係人集会( 更生計画案の審議 )
  11. 第3回関係人集会( 同上決議 )
  12. 更生計画認可決定
  13. 更生手続終結決定


挿絵01  民事再生 
2000年施行
民事再生の条件
  その会社に再生の可能性があり、再生することが望ましいと判断されること。 つまり、経費の見直しで、再生すると見込まれること。そのためには、営業利益が出ている分野があることが必要となります。 借入金の元利金返済をカットできれば、収支が改善される。そのような会社が対象です。 民事再生の債務カットは、金融機関からの借入金のみならず、仕入先からの仕入債務も対象となります。 仕入先などからの協力も得つつ、再生を目指すことになります。
  民事再生法の申請により、仕入先からの調達ができなくなる場合は、ビジネスの継続が困難となってしまいますので、仕入先からの協力が得られるかどうかは重要なポイントです。 民事再生手続きを申請した場合、通常、信用取引はできなくなり、仕入先からは、現金での支払が求められることが一般的です。
  また、裁判所への予納金や、弁護士・会計士費用も必要となります。このような当面の支払をもちこたえられないと手続きを進めることはできません。 したがって、資金収支がぎりぎりになってから、民事再生法の適用を検討するのではなく、少しでも余裕のあるときから、検討しておくことが望ましいことになります。
民事再生のメリット
  裁判所の裁定によるので、公明性が高い。
  経営権を失わないで、債務の一部消滅を実現できます。
  会社分割をして採算部門を切り離してから、民事再生の適用を受けるのが有効です。
民事再生のデメリット
  申し立てを開始した時から、取引先から契約解除を受けやすい。
  ※大手との取引契約には、ほとんど「民事再生に入れば契約を解除する」と明記されているのが一般的。
  仕入れ先から現金での購入を要求されることが多い。
  手続に時間がかかる。(通常1年程度)
  債権者の過半数の同意が必要
  裁判所に予納金を納める必要あり。(ex:負債5億以上10億未満−500万円)
  ※弁護士や公認会計士の費用に充てられる。
  手続が煩雑で、通常弁護士を雇う必要があります。(費用は通常500万以上)
民事再生の手続
  1.再建手続開始の申立て
  2.保全処分による財産保全
  3.再生手続開始決定
  4.再生債権の届出(再生債権の届出・調査・確定、再生債務者の財産の調査・確保)
  5.再生計画案の作成・提出
  6.再生計画案の決議・認可
  7.再生計画の遂行
  8.再生計画の履行完了


挿絵01  会社分割 
2001年施行   会社分割は、企業の不採算部門の切り離しや、異なる企業の同一部門をお互いに分離・統合しスケールメリットを求める場合、あるいは持株会社化などに行われ、法人の事業部門の全部又は一部を、既存法人や新設法人に移転することとなる。全部を移転すれば、経済実態上は「合併」と同様の効果が得られる。
会社分割の条件
   特段の制限はない。
会社分割のメリット
  資産負債の選択的包括承継が可能。
  債務を債権者の同意なく、別法人に移すことが可能。
  2001年4月1日に当時の商法にて発効し、導入された。導入以前からあった営業譲渡(会社法に移行後は事業譲渡)と比較して、会社分割はその手法が明確になされているために、用途自体は限定的である一方で分社化に際しての透明性が高いうえに手続きが簡素である。それゆえ、会社分割制度導入以後の分社化では、会社分割が用いられるケースが多い。 通常の会社分割では、法人Aが法人Bの持株会社となるなど、分割後もA・B両法人が普通の会社として存続するのが一般的である。これに対し、「新旧分離」においては、分割前の会社が著しい債務超過に陥るなど自力更生が困難になったものの、諸般の事情により事業を継続していく必要があるケースで用いられる。この場合法人Aは、債務弁済・清算の目的のみにより存続することとなり、事業譲渡の手続を伴う。 債務超過で身動きできなくなった企業を、破産法関連の諸施策より短期間(2W〜2か月)で負債の少ない、稼ぐ力のある企業に蘇生できます。 存続会社(旧)の事業をほぼ承継会社に承継させ、存続会社にほとんど財産が残らないのに存続会社に債務が引き続き残る場合には債権者異議手続の対象にならないことが迅速に進める要点である。 債務者主導による過剰債務処理ができる唯一の手法である。
  破産法関連の諸施策は風評被害で実質的に倒産に追い込まれるケースが多いが、会社分割にはその恐れが少ない。
  ※ 会社更生の概念ではなく、会社更生の目的に分割を利用している点が味噌。倒産情報会社や取引先や銀行にも知られないで済む。
  ※ 欲しくない部分は分割会社に残し、欲しい部分だけを新会社に残すことができる。
  ※ コストが安い。
会社分割のデメリット
   債権債務そのものを消滅させる力はない。
   債権・債務の選択的承継にともない、法的、会計的、税務的判断(専門的かつ高度)を必要とする。
   債権者の同意がなくても債務の承継ができるが、債権者保護手続(会社法第5編)が免除されるわけではない。(結局この規定との知恵比べということになる)
   分割時の資産負債の引き継ぎに関し、税法・会計の高度な知識が必要となるケースがある。
   分割継承会社の分割後の資金繰りの目途がたっていないと、分割後早晩行き詰る。
   分割承継会社に分割会社の許認可が承継できない場合や、時間がかかるケースがある。
   粉飾決算している場合、帳簿を正しくしないと分割が難しい。
会社分割の手続
( 新設分割 )
  1. 新設分割計画の作成
  2. 新設分割計画に関する書面等の備置
  3. 新設分割計画の承認等
  4. 株主への通知等及び新株予約権買取請求
  5. 債権者保護手続き
  6. 登記( 新会社の成立 )
  7. 新設分割に関する書面等の備置


挿絵01 その他の諸策
  RCC企業再生スキーム 
  これは、RCC(整理回収機構)が2004年に制定したIRCC企業再生スキーム」にもとづくもので、企業再建の基礎を債権者による債権放棄に置き、その債権放棄を法人税法上の損金とすることによって円滑に実現しようとする、きわめて税務的な手法です。
債権者が債務者会社を再建するために債権放棄をした場合に、債権者にとっては、「法人税法基本通達9-4-2 Jに該当するものとして、損金となることを最重要視するものです。
  私的整理ガイドライン 
   これはイギリスの、債権者の協定であるINSOL(倒産実務家同際協会)を基礎とするもので、債権者と債務者との合意にもとづく私的整理という考え方に立っています。
再生計画案について、債権者全員の同意書面を要求するものです。
過剰債務を抱える債務者会社が、再建策を検討する局面で、関係債権者全員の同意を要求するので実行は極めて困難といわれています。
  地域力再生機構 
   事業者とメイン行との調整を得ながら、「支援機構」において事業再生計画を策定する仕組みです。
債権者の同意を要することが前提となっています。
 中小企業再生支援協議会  
   これは、産業活力再生法42条以下に規定されています。各県ごとに置かれている常設の中小企業の事業再生支援組織です。その実態は、協議会から委嘱を受けた公認会計士や税理士ら専門家の協力を得て、債務者の申し立てを聞き、さらに債権者の考えを聞き、両者の立場を尊重しながら再生計画の策定支援を行なう仕組みで、行政による調停とでも呼べる、穏やかな中立的手続きです。
しかし、再生計画の策定は企業再生を実現する仕組みというわけではなく、経営状況の悪化に苦悩する中小企業の、とりあえずの、駆け込み寺的機能と、「事業再生ADR、第二会社方式、株式会社企業再生支援機構」など、さまざまな企業再生を看板に掲げる組織ないし仕組みへの導入窓口的機能という性格です。
 事業再生ADR 
   事業再生ADRは、法務省管轄の「裁判外紛争解決手続きの利用の促進に関する法律( いわゆるADR法 )によって認証されたADR組織が、さらに経済産業省管轄の産業活力再生法にもとづいて、経済産業大臣から事業再生向けのADRとして認定を受けたもので、いわば事業再生に特化した裁判外紛争解決組織です。このため、債権者と債務者のあいだで任意に進められる点に特性があります。


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